ふと見ると、彼女は何やら書き物をしていた。

ふいにチーフに呼ばれると、丁度書き終わったのか、彼女は筆を置いた。

そして、深呼吸をして、すっくと立ち上がり、城の外へ出て行った。

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2017年7月20日 晴天

ある日突然、私は弱体化されました。

私のスケルトンたちがトラップに反応しなくなってしまったのです。

最初はどうしてこんな事になってしまったのか全く理解できませんでした。

それまで、私のことをみんな大好きだったはずなのに。

ネクラ、ネクヒー、ネクラ、ネクヒー!

そして、その日を境に私は周囲から無視されるようになりました。

「あいつはもうダメだ」

「最近ぜんぜん表舞台に現れなくなったな」

私の見えないところで憐れむ仲間たち。

チーフからメンバー発表があるたびに、自分の名前がそこにないことを確認し、城の中へ戻る日々。

仲間たちの賑やかに喜んでいるところを通りかかると、みんなは軽く会釈をしてくれました。

「今回も星3個取れたんだ!おめでとう!」

私は平静を装い、明るく振る舞って、その場を立ち去ります。



私は役立たずのクズだ。。。

二度と見向きもされない存在。。。

誰からも必要とされていないんだ。。。

なぜこんな仕打ちを。。。

あぁ神様なぜ私にだけこんな仕打ちを。。。



あれから1年半が経ちました。

私は復活しました。

再びチームの中で輝きを取り戻すことができました。

あんなにひ弱だった私も巨大爆弾を踏んだだけでは死ななくなりました。

スケルトンたちだって時間をかけずにたくさん召喚できるようになりました。

今なら分かります、今なら。

でも、あの時は、ただただ辛くて、その辛さに耐えて生きるだけの日々でした。

でも、本当は私は必要とされていたのです。

必要とされているからこそ、愛されているからこそ、再びチーフに呼ばれる存在になれたのです。

私はずっと必要とされる存在だったのです。

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彼女が密かに書いてた日記。

ごめんね、いけないと思いつつ読んでしまったよ。

城を飛び出していった彼女の後ろ姿を思い浮かべ、僕は涙を流した。

それじゃ僕はどうなんだろうか。

壁に立てかけてあるスコップを手に取り、磨き上げたスプーン状の鋼に映る自分をまじまじと見つめる。

僕だって、僕だってきっと。
きっと愛されているんだ。

ディガーはそう自分に言い聞かせると、力強くスコップを振り上げ、地中深く潜っていった。

作:ことみん